小浦眼科

眼瞼下垂(がんけんかすい)について

瞼(まぶた)が被さって見えにくい、瞼を持ち上げると見やすい、視界が広がる、目を開けておくのが疲れるなどの症状があります。 また、おでこの筋肉(前頭筋)を使って眉を上げて眼を開けるため、おでこの皺などが生じやすくなります。顎(あご)を上げて見るなど姿勢の変化や他部位の筋肉に負担をかけることに伴って、肩こり・頭痛の症状を来している人もあります。

原因は?

  • 加齢によるもの(退行性)

    加齢によって、皮膚のたるみ(ゆるみ)が生じて瞼が被さってくる場合と、瞼を挙げる筋肉が伸びたり働きにくくなって瞼が被さってくる場合があります。

  • コンタクトレンズの長期装用、緑内障点眼などによるもの

    コンタクトレンズ、特にハードコンタクトレンズの長期使用による長期的刺激、緑内障点眼、内眼手術歴による眼瞼への影響も知られています。

  • 筋肉の病気によるもの(筋原性)

    自己免疫疾患などにより瞼が上がりにくくなることがあります。

  • 生まれつきによるもの(先天性)

    瞼を挙げる筋肉の発育不全によります。幼少期の瞼の被さり方によって変わりますが、左右差や視力がきちんと出ているか眼科で検査が必要です。弱視にならないように治療が必要です。

  • 神経の異常によるもの(神経原性)

    脳神経からの指令伝達の障害などで生じることがあります。頭頚部に原因疾患がないか、精密検査が必要です。

問診および検査

瞼が下がってきた時期や程度など、詳しく問診します。

  • コンタクトレンズの使用歴。外傷歴、手術歴、全身疾患、頭頸部の疾患の既往や治療の有無など。
  • 幼少期からの場合は、できるだけ小児期の顔写真(正面で撮影したもの)や、成人からの場合は数年前の顔写真(正面で撮影したもの、免許証など)があればご持参ください。
  • 他の症状、所見が無いか神経学的な所見も確認します。
    瞬きや表情筋の左右差の有無。眼位眼球運動、瞳孔径、対光反射、複視、斜視の有無、炎症やドライアイの有無など。

  • 急に瞼が下がって目が開きにくくなる場合や、数か月前から物がダブって見え始めたなどは、頭蓋内の精密検査が必要になりますので、神経内科や脳神経外科の診察を受けていただけるようにご紹介することがあります。他に、瞼が腫れる、むくむ、顔貌が変わってきたなどの症状を伴っている場合は内科的疾患が隠れている可能性もあり、血液検査などが必要なことがあります。眼瞼痙攣や顔面痙攣、顔面神経麻痺、ドライアイなどが合併している症例もあります。
    最も頻度が高いのは、加齢とともに、ゆっくりと瞼がゆるんで被さってくる眼瞼下垂(退行性)ですが、他の疾患を除外しながら診断します。

治療法は?

手術により、症状の改善が得られる可能性が高い場合は、瞼を挙げる筋肉を強化する手術(眼瞼下垂手術:眼瞼挙筋前転法)を行います。先天性や麻痺性、筋原性などで、まぶたを挙げる力(挙筋能)が弱い場合は、吊り上げ術が必要になることがあります。

一方、皮膚のたるみの被さりによって、視界が狭くなる、見えにくいなど、症状がある場合は、まぶたの余分な皮膚を減らす手術を検討します(眉毛下、または瞼縁:二重ライン)。

眼瞼下垂の程度、瞼の形や厚みの程度、元々の一重や二重、多重瞼ラインによって、また原因や合併疾患の有無により、個々の患者さんにできるだけ合った治療法をご提案、検討いたします。

術中の麻酔の影響や、緊張による開瞼不良などで、術中開瞼定量が困難になり、術後過矯正や低矯正、左右差が生じる場合があり、程度によって追加手術が必要になることがあります。

※当院では、美容目的の治療は行っておりません。

眼瞼内反症について

目に睫毛が当たっている異物感(コロコロ、チクチクなど)、目やに、充血、睫毛を抜いてもらっているけど抜いてもまたすぐ異物感がでてくることが多く見られます。

原因は?

  • 加齢性によるもの

    瞼(まぶた)を支えている組織が加齢によりゆるんで、まばたきに伴って、瞼が内向きに回旋して睫毛(まつげ)や皮膚が眼に当たることで生じます。皮膚のたるみや過去の結膜炎などで睫毛の向きが変化しているものもあります。

  • 幼少期よりあるもの

    睫毛内反症といいます。睫毛の向きが眼球方向へ生えていて目に当たり、眼球側にまぶたを引っ張る力が強いことや、余分な目の周りの皮膚が多いと生じやすくなります。視力が良好で、症状や所見が軽い場合は、顔の成長に伴い、睫毛の当たりが改善することもあります。

症状は?

目の違和感、かゆみ、充血、痛み、めやに、流涙、まぶしさなど生じることが多く、目の表面の角膜にキズが増えたり、時に角膜のキズが感染したり混濁を来すと視力低下を生じることがあります。

治療は?

  • 加齢性(退行性)眼瞼内反症

    下眼瞼にある牽引筋腱膜lower eyelid retractors(LER)のゆるみを修復する手術: Jones変法(lower eyelid retractor’s advancement)を行います。下眼瞼の睫毛方向が正常な位置に改善するように整えます。

    瞼板を支える水平方向のゆるみ(内外嘴靭帯の緩み)が原因となっている場合は、術前検査(Pinch test, Snap back test等)が陽性で、下眼瞼の外反も伴っていることがあり、外反症手術でも施行するlateral tarsal strip(LTS)法も検討します。

  • 成人の上眼瞼内反症は、元来の眼瞼の形状に加えて余剰皮膚など前葉の睫毛への乗り上がりによるものや、過去の結膜炎や外傷、慢性的な炎症などによる睫毛乱生も合併していることがあります。

    程度によって、睫毛電気分解、睫毛根切除やHotz変法、余剰皮膚切除など組み合わせて手術し、複合的に再発率を減らします。

  • 小児の場合、痛みや羞明、こするなど症状が強い、強い乱視による視力不良、不同視がある場合は、眼鏡などの弱視治療が必要になることがあります。

    タイミングをみて睫毛内反の手術が必要になります。主に、Hotz変法を施行しますが、LERによる引き込みが強い場合は、内反症の再発を減らす目的でLER延長などを併せて施行しています。