retinal disease
こんな症状ありませんか?
網膜硝子体手術を専門とする、院長の小浦が網膜の病気について詳しく解説します。
硝子体出血のほとんどは、硝子体中には血管がないため網膜側の血管からの出血が拡散したものです。 硝子体中に出血が拡散すると光が出血によってさえぎられて網膜にうまく届かなくなるので、 飛蚊症・霧視・視力低下などを起こします。出血が軽い場合は数週間で吸収されますが、 濃い場合は数カ月以上かかります。出血の原因には糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、網膜裂孔などいろいろとありますが、 黄斑(網膜の一番大切な部)に障害が及んでいる場合や、網膜剥離を合併している場合は後遺症を残すことがありますので硝子体手術を行って出血を取り除き、 原因疾患の治療をする必要があります。
目の中でフィルムの役目をしている網膜に穴(網膜裂孔)があき、 硝子体中の水分がその穴から網膜のうしろに廻り込んで網膜が剥がれてくる病気です。 放置すれば網膜は全部剥がれて失明してしまいます。また長い間剥がれたままにしておくと網膜の細胞は死んでしまいますから、 たとえ剥離がなおっても十分な視力は回復しません。 原因は不明ですが、体質や加齢、打撲、強度近視などが誘因と考えられています。 このように網膜に穴があいておきる網膜剥離を「裂孔原性網膜剥離」といいますが、 糖尿病網膜症などによっておこる牽引性網膜剥離、 炎症などによっておこる滲出性網膜剥離のように網膜に穴が開くことなく網膜が剥がれることもあります。 治療は原則として手術が必要ですが、初期の場合は裂孔の周りをレーザーで照射する治療でおさまることもあります。 レーザー治療は外来で可能です。手術の場合は剥離の程度により、バックル手術か硝子体手術を行います。 網膜剥離がおこると、その部分の視細胞は栄養をうけることができなくなり、機能が著しく低下します。 網膜の中でも一番大切な黄斑部が剥離すると短期間で機能が低下するので、 適切と思われる手術法で網膜剥離を早期に完全に治すことが必要です。
日本では糖尿病の患者数は約 690万人、予備軍を含めると、約1,370万人になると言われています。 糖尿病が問題になるのは、合併症が起こるからです。糖尿病の三大合併症として腎症、神経症とならび挙げられるのが網膜症で、 糖尿病患者の30〜50%が網膜症を合併しており、実際、毎年3000人以上の患者さんが失明しています。 網膜症は、定期的な眼科の検査を受け、糖尿病と眼科の適切な治療を続けていれば、確実に防げます。 糖尿病と診断されたら、以下の病期の説明にしたがって眼科での定期的な受診を心がけてください。
眼科的に異常を認めない時期です。内科的コントロールが治療の主体となりますが、 半年から一年に一回は眼科受診を心がけてください。
点状、斑状の小さな眼底出血が主体の時期です。内科的コントロールと眼科的経過観察が主体となります。 この時期は、3か月に一回程度の眼科受診が必要です。この時点では、自覚症状は特にありません。
小さな眼底出血に加えて、静脈や小血管の異常が強くなり、網膜の虚血変化が出てきます。 自覚的があったとしても軽いもので、黒いものが飛んでいるような(飛蚊症)感じがしたり、かすんで見えたりする程度です。 しかし放置すると増殖網膜症に進行しやすいため、眼科的には網膜光凝固治療が必要になることが多くなります。
光凝固は虚血で酸素や栄養不足になった網膜組織をレーザー光線で凝固(焼き付け)することで、 増殖網膜症に進行させる増殖因子などの放出を抑え、 網膜症の進行を予防するために行います。 外来だけで済ますことができ、これだけの治療で網膜症の進行を阻止できるケースも多いので、 早めに眼科に来院してください。 この時期なら通院間隔は3か月以内が必要です。自覚症状が出てからでは遅いこと、 ここまできたら内科的コントロールだけ一時的にがんばっても網膜症は一人歩きして悪化する可能性があることを肝に銘じて、 通院をさぼらないようにすることが必要です。
さらに進行して併発症を起こします。 併発症の種類はさまざまで、眼内に広く出血する硝子体出血、 増殖膜の増生やそれによる牽引性網膜剥離、黄斑症、難治な血管新生緑内障などです。 網膜光凝固による治療はもちろん必要ですが、進行を阻止できないことも多く、その場合は硝子体手術が必要です。
網膜(カメラのフィルムに相当する組織)の中心に位置する黄斑には、見るための重要な細胞が集中しています。 その大切な黄斑に老化に伴った変化、例えば異常な血管(新生血管の発生)・出血などが起こり、次第に見えにくくなる病気です。 加齢に伴って起こり、特に60歳以上の男性に多くみられます。 また喫煙者に多いことも報告されています。
症状は網膜の中心部が傷害されますので、まず見ようとするところが見えにくくなります。 最初は物がゆがんだり小さく見えたり暗く見えたりします。また急に視力が低下する場合もあります。 黄斑に病気が限局していれば通常見えない部分は中心部だけですが、大きな網膜剥離や出血が続けばさらに広い範囲で見えにくくなります。
治療法は病気の進行度や重症度によって異なります。出血の予防のために止血剤を用いたり、 加齢黄斑変性になりやすい人では発病予防のためにサプリメントを摂取するのが有効だという報告があります。 新生血管が黄斑外にあればレーザー光凝固を行います。黄斑に新生血管が及んでいる場合には、 新生血管を抑制する薬を眼内に注射したり、光線力学的療法が行われます。
加齢黄斑変性から視力を守るには早期発見・早期治療が重要です。早期発見できれば有効な治療が行われ、 視機能を維持させることが可能になってきています。もし、物がゆがんで見えたりしたら、ご相談下さい。 また、自覚症状がない人でも、眼底に加齢黄斑変性になりやすい所見を観察することがありますので、 50歳以上の方は一度、眼底検査をすることをお勧めします。
網膜の静脈が流れにくくなる病気で、主に高血圧や動脈硬化によって引き起こされることが多いです。心臓にかえる静脈の血流が滞ると、血管から血液や水分があふれ出し、眼底出血が生じたり、網膜浮腫(むくみ)を起こすようになります。さらに眼底出血や浮腫が黄斑(物を見る上で最も重要な部分)にまで及ぶと、視力は低下し、放置すれば回復が難しくなります。注射や網膜・硝子体手術により視力の維持を目指します。
黄斑の上に膜が張る病気です。黄斑の上に膜があることで、黄斑を引っ張ります。 そのため症状は物がゆがんで見えるようになったり、視力が低下してきます。 原因は他の病気に続発してなる場合もありますが、原因が分からないことのほうが多いです。 この膜は自然に吸収されることはありません。治療は硝子体手術を行い、黄斑の上の膜をピンセットで剥がします。 視力が良くても物がゆがんで見える場合は手術をした方が良いと思います。 しかし、手術で膜を剥がしても、ゆがみは少なくなりますが、完全にゆがみが消えることはありません。
黄斑に穴が開く病気です。黄斑に穴が開くと視力は0.3以下くらいに低下します (穴が大きかったり、発症から長い期間が経つと0.1以下になります)。 また見え方も中心がクシャっとして見えます。原因は、外傷や他の病気に続発してなる場合もありますが、 原因が分からないことのほうが多いです。 治療は硝子体手術を行い、眼内にガスを注入します。 眼内にガスを注入するのは黄斑円孔を閉じさせるためなのですが、 患者さんには術後5日くらいのうつ伏せ姿勢をとっていただくことになります。